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ベックはうつ病の認知療法を1963年に考案しました。その後、他の系列のものを含め、世界的な広がりを見せています。効果研究でも、多くの症状(うつ、不安、パニック、痛み、過食など)でその有効性が世界的に認められています。
様々ある認知療法に共通していることは、認知と感情(身体)、行動の関係に注目したことにあります。
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上の図のように、人間というのは、何らかの状況に直面した時、まずその事態を認知し、そして感情が起こり、そして行動する、という順序で体験します。恐らく、日常的感覚では、すぐに感情を感じたり行動したりしていると体験するでしょう。しかし、実は、その前に認知があることに着目し、そこを変化させれば治療的にうまくいくことを発見したのが、認知療法です。
例えば、大切な人を失うという状況に直面すれば、すぐに「憂うつ、気分の落ち込み」という感情を感じたり、「引きこもる」という行動を起こしてしまうと思われるでしょうが、実は、その前に「失った」という認知が先行しています。下図。
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次に「不安」という感情が起こる場合を考えてみます。例えば、入学試験のような状況を「とてもできそうにない」「難しい」と認知すると、不安が非常に高まります。そうした人の中には、試験を「回避」するという行動をとる人もいます。下図。 |
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それでは、どのようにして認知を修正していくかといいますと、上の「不安」の場合では、まず、「とてもできそうにない」という認知と「どうしたらいいのだろう、試験が不安だ」という不安感情を区別することを学びます。そして、「とてもできそうにない」という認知と少しでも矛盾する事実を探し出します。もし受験科目の中に一つだけ得意な科目(例えば英語)があれば、それを取り上げます。そして、「不得手な科目もあるけど、英語は得意だ。」というような新しい、より適応的で自分を楽にする認知を考え出します。そういうことを積み重ねていきますと、段々と認知は修正され、不安は減少していきます。(下図)
ここでは簡略に書きましたが、こういうことを何度かの面接をかけもっと緻密なやり方で実現させてゆきます。
これは認知療法の中でも最も中心的な「認知再構成法」というやり方です。他にも様々な技法があり、適宜、活用され、成果を上げていきます。
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